管理指導業務は、狂犬病予防及び犬猫等による危害迷惑防止のために、犬の捕獲・抑留及び犬・猫の引取り等を行っています。以後順次説明を加えます。なお、管理棟は撮影禁止でしたので、棟内の様子は公式ホームページ(こちら)をご参照ください。
1.犬の捕獲・抑留・返還
「狂犬病予防法」と「名古屋市動物の愛護及び管理に関する条例」に基づいて実施されています。21年度の捕獲頭数は375頭で前年度の482頭より減少しています。抑留日数は法定日数の3日を上回る約1週間とし、必ず土日を期間内に入れることで飼主が探しに来てくれる時間的な猶予を設けています。できる限り救命したいという職員の方々の意識の表れです。飼主への返還に当たっては、適正飼養に関する指導と登録、狂犬病予防注射の実施を確認したうえで行っています。
次に捕獲犬の返還状況を見てみましょう。
抑留犬の返還率は20年度に一旦下落しましたが、21年度には53.1%に上昇し、199頭が返還されました。なお、返還時には犬の逃走の再発防止を指導するとともに、登録、狂犬病予防注射の実施を確認、未実施の場合はセンターにて実施しています。
なお、返還時の手数料等は、下記のようになっています。
●返還料 3,000円
●飼育管理費 400円/日
●犬の登録申請手数料 3,000円
●狂犬病予防注射済票交付手数料 550円
●狂犬病予防注射料 2,750円
2.犬・猫の引取り
市内の16保健所とともに行っています。引取りの際には、飼主に終生飼育を説得し、飼えない理由が適当と認められた場合にのみ引取るとのことです。また、子犬・子猫を引取る場合は、親犬・親猫の避妊・去勢手術の補助金交付制度の説明と奨励を行うことで、同じことの繰り返しを未然に防ぐ取り組みを行っています。
引取場所別の引取日時は、下記のようになっています。
●名古屋市内16保健所 月~金(除祝) 8:45-11:00
●動物愛護センター 月~土(除祝) 8:45-16:00
3.自活不能猫の保護収容
自分の力で生きていくことが困難と思われる捨てられた子猫の保護と収容を行っています。21年度は2,979頭が収容され、20年度より減少はしていますが、ここ5年程3,000頭前後で推移しています。望まない繁殖を未然に防ぐ室内飼養等、適正飼養に関する認識の普及が踊り場をむかえていることが伺えます。
4.負傷動物の収容・返還・譲渡
出動要請に基づいて、負傷した犬・猫・ウサギ・鶏・鳩・アヒルを収容し、治療しています。返還されなかった動物は、要望があれば譲渡していますが、猫の場合の返還・譲渡率は2.2%(5/226頭)に過ぎず、ほとんどが殺処分されています。
5.失踪動物・保護動物の捜索に対する飼主への協力
平成14年5月に「失踪保護動物情報管理システム」が導入され、保護動物の情報を一元管理することにより、市内各保健所かセンターのどこでも全市の情報が入手できるようになりました。現在はセンターに収容された犬猫をデジカメで撮影した画像も見ることができます。このシステム導入により、犬の返還率は向上しています。
システム導入効果は、平成14年度の返還率が前年度比7ポイント程度向上したことに表れています。逃走してしまった犬を懸命に探す飼主にとって、このシステムは福音になっていることの証左といえるでしょう。また、過去8年間継続して捕獲頭数が減少していることも見逃せません。捕獲頭数が減れば飼養の手間も減り、そのぶん返還のために時間を使うことができると考えられます。21年度の返還率は50%を超えましたから、犬が迷子になった時には、各保健所かセンターまで迅速に問い合わせることが早期発見につながると考えられます。
また、21年度よりセンターからの譲渡動物へのマイクロチップ装着が義務化されたことも朗報です。譲渡動物が再び脱走してしまったり行方不明になった場合でも、最寄りの保健所やセンターに収容されていれば返還される可能性が高いものと期待されます。
6.処分及び焼却
処分対象となった犬・猫等は炭酸ガス処分機で安楽死処分を行い、処分した犬・猫等は名古屋市立八事霊園・斎場管理事務所に焼却を依頼しています。センターから頂戴した事業概要資料から処分頭数や内訳等について調べてみました(下図は「名古屋市動物愛護センター事業概要(平成19、20、21年度)」の統計資料に基づきペットライフケアが作成)。
21年度の処分頭数は犬207頭、猫4,521頭、合計4,728頭が処分されています。それぞれの内訳が下図です。
19年度から21年度までの3年間の殺処分頭数です。犬の場合はほとんどが成犬、猫の場合はほとんどが子猫です。犬猫ともに3年連続して総頭数は減少しています。犬の場合、登録や狂犬病予防法による法規制が適正飼養の普及及び野良犬の減少に役立ち、捕獲頭数自体が減っています。また、失踪保護動物情報管理システムの効果で抑留犬返還率が高まったこともあって殺処分頭数の減少につながっているものと考えます。
次に猫について見てみましょう。刮目すべきは処分頭数の多さです。19年度以降の殺処分頭数は5,158頭、4,992頭、4,521頭と減少傾向にはありますが、絶対的な処分頭数の多さは犬とは桁違いです。しかも、子猫の多さ(19年度4,522頭(87.7%)、20年度4,353頭(87.2%)、21年度3,990頭(88.2%))には胸つぶる想いがします。猫に関しては返還率のデータがないので、譲渡頭数と救命率を再度見てみましょう。
過去5年間、譲渡頭数は徐々に増加して、21年度には146頭、救命率は3.2%になりました。犬と違ってあまりにも低い救命率です。この原因を考えてみましょう。まず、猫は犬と違い登録制度がありません。首輪や鑑札等、飼主を探す手掛かりが乏しく、マイクロチップも普及途上であることと、失踪保護動物情報管理システムでも画像を掲載するしか手立てがないため、逃走した猫を飼主が探すこともままならないということが考えられます。そもそも飼主がいない野良猫や、飼主が捨てた子猫に関しては返還の機会そのものを得ることができません。
また、生まれたばかりの子猫を保護しても、センターには子猫を飼養するための設備と人手がありません。既述のとおり、建物自体が犬の捕獲・収容・譲渡を想定して建設されており、猫用の収容室は展示舎にわずか1室(3㎡)しかありません。現在は展示室や管理棟の通路等にケージを入れてできる限り飼養するよう努力されていますが、現在の施設では自ずと限界があると言わざるを得ません。
運よく新たに飼主になりたいという要望があっても、その猫が病気にかかっていれば譲渡できません。収容されている猫の中には、ネコエイズをはじめとする病気に罹患している子も多く、センターで行われる治療は、必要最低限の治療として認められる応急処置に限定されていますので、病気が治癒するまで加療することはできないのです。
譲渡先に関しても制約があります。譲渡先は、センターが設定した「適正飼養の基準に合致する」と考えられる名古屋市民に限られています。センターとしては、猫の適正飼養を広く市民に普及させることを重視していることもあり、「譲渡したのち再び捨てられる恐れなし」と判定された場合のみ譲渡されるということです。
こうした状況を打破するため、平成22年7月26日から動物愛護センターでは譲渡ボランティア制度を導入しました。譲渡ボランティアは、一般家庭への譲渡までに訓練や治療等のケアが必要な犬猫や、長期にわたり飼主が見つからない犬猫等を一時保護し、適切な飼主を探して頂く役割を担って頂いています。動物愛護センターの審査に合格したNPO法人、市民団体、動物愛護団体、個人等の譲渡ボランティアと連携して、殺処分される子猫を少しでも減らそうという努力が、一頭でも多くの子猫の命が救われていくという結果に結び付いていくことを期待してやみません(譲渡ボランティアの概要、公式サイト)。
7.その他
処分犬の評価、咬傷犬の検診、早朝捕獲時の適正飼育指導、逃走特定動物の捕獲協力及び一時保管等の業務を行っています。
管理棟横にある動物慰霊碑です。殺処分された子たちの御霊を慰めるため、例年慰霊祭が行われています。獣医師会、保健所職員、職員、市民の皆様が参列されます。2010年は9月17日(木)に行われました。
処分された子たちの無念を思うと、一刻も早くこの状況を改めるために、ひとりひとりが自分にできることから何かを始めなければならないと手を合わせながら考えました。