引き続き愛護指導業務を紹介していきます。

4.犬猫等の適正飼養を普及・啓発するための教室・事業等の開催


※「犬のしつけ方教室(実技)」は18年度に「犬のしつけ相談」に移行、19年度からそれぞれ分離開催となっています。
犬猫の適正飼養を普及活動の直近5年間の開催回数と参加人数を見ると、20年度に踊り場はありますが、センターの努力が参加人数の増加につながっている様子が伺えます。各活動の内容をもう少し詳しく見てみましょう。まず犬に関する適正飼養啓発教室・事業からです。

「犬のしつけ教室」は、その名の通り飼犬の適正なしつけ方を学ぶ場です。しつけ方の基本、散歩中に排泄させないしつけ、犬とのふれあい方、服従訓練のデモンストレーション等を行います。参加家族数、人数とも昨今の適正飼養に関する関心の高まりもあって増加傾向が続いています。それでは続いてパピー(子犬)に関する取り組みを見てみましょう。

「パピー教室」は、生後3カ月~6カ月の子犬を同伴して参加して頂く毎月1回定期的に開催されている教室です。子犬の性格判断、基本的な犬とのふれあい方としつけ方を学びます。参加家族数、人数とも20年度まで減少傾向にありましたが、21年度は開催回数の増加の影響もあるとはいえ増加に転じました。民間のペット関連サービス業や動物病院の積極的な取り組みも考え合わせれば、適正飼養に対する意識の高まりはより一層拡がりを見せていると推定されます。

次に猫に関する適正飼養啓発の取り組みを見てみましょう。

猫に関する取り組みには、「猫の飼い方教室」と「猫と遊ぼう!-楽しい室内飼育のすすめ-」があり、猫の室内飼育を普及させるために行われています。「猫は放し飼いにして外で飼うものである」という従来の概念を払拭し、名古屋市をはじめとする都市圏で問題視されている野良猫や飼主のいない猫をこれ以上増やさないためにも、猫は室内飼育が適正であるという意識の普及は急務です。

名古屋市の場合、他の都市圏に比べて持ち家比率が高いことと、適正飼養が根付いていないために飼主のいない猫が多産され、非常に多くの猫がセンターに収容されている現実があります。室内飼養と避妊・去勢手術を行って無計画な繁殖を避けることが当然という考え方は未だ定着していません。21年度の参加人数が減少した背景に何があるのか、今後も注視していきたいと考えています。

ここで、適正飼養のために不可欠な避妊去勢手術に関する補助金交付状況を見てみましょう。

名古屋市内在住の飼主(犬の場合登録と平成22年度の狂犬病予防注射済票を交付された方)は、名古屋市指定の動物病院で手術日程を調整のうえ、印鑑を持参して直接各保健所で行って頂ければ、犬♂1,450円、♀2,900円が、猫♂1,050円、♀2,100の補助が受けられます(現在は受付一時停止中;詳細は犬猫の避妊・去勢手術費用の補助について(公式サイト)をご覧ください。都市圏で動物を飼うにはこうした対処も必要なことであるとペットライフケアでは考えています。

ここまでは犬猫に関する取り組みでしたが、犬猫に限らず家庭で飼われているペットに関する飼養・しつけ方に関わる市民からの相談にはどのように応じているかを見てみましょう。

「犬猫等の飼養・しつけ方相談」では、しつけ方、健康管理、苦情等をはじめ、どんな事でも毎日相談に応じ、アドバイスを行っているとのことです。年々相談件数は増加しています。

所内活動の他の教室・事業をまとめて見ておきましょう。

問題行動のある飼犬を対象とする「問題犬のためのしつけ方教室(公式サイト、リーフレット)」、クリッカー(音の出る道具)、ヘッドカラー(犬の鼻先につける道具)、引っ張り防止用ハーネス等の道具を使った「犬のしつけ方教室」、介護が必要になった高齢の犬猫の飼主を対象とする「今から考えよう!高齢犬のケアー(公式サイト、リーフレット)」ふれあい用事業犬を散歩犬として貸し出して行う「犬の散歩指導」が所内で行われています。

なかでも、犬猫の高齢化が進展するのに伴い、必要になる介護問題について、飼主に予め認識させ、準備させる「今から考えよう!高齢犬のケアー(公式サイト、リーフレット)」に関しては今後ニーズが高まるものとペットライフケアでは考えています。ペット介護の場合、心構えはもちろんですが、介護環境の整備と費用の問題に直面します。わが家の場合は猫だったのでそれほど広いスペースは必要ではありませんでしたが、それでも2畳程度の専有スペースは必要でした。酸素吸入機器の搬入を検討した時には、機器の調達、機器設置スペース、排熱の換気、振動・騒音対策、必要な資材の調達など、非常に多くの手間と費用がかかることがわかり、苦慮しました。

こうしたことを予め理解しておくことは大切なのですが、実際にその事態に直面するまではなかなか実感できず、いざ現実になって慌てて対処すると、結局は心理的にも金銭的にも大きな負担となってしまいます。高齢のペットの飼主の方には有益な内容ですので、該当する場合は是非ご参加されてはいかがでしょうか。


次に、所外活動に目を転じましょう。所外活動では狂犬病予防注射会場での「犬のしつけ方相談」と「移動しつけ方相談」、「区民祭等での動物愛護啓発事業」が行われています。

狂犬病予防注射会場での対応はここ3年程度ほぼ横ばいですが、区民祭等での対応が21年度に再び増加に転じました。他の会場と違い、参加者が楽しんでいるところで開催されるため、気楽に相談できる雰囲気であることが功を奏しているかもしれないとペットライフケアでは考えています。


保健所からの要請に基づいてしつけ方教室のモデル犬を同伴し、地域に出向いて犬のしつけ方教室を行い、「散歩中に排泄をさせないしつけ」を重点的に普及しています。犬の排泄を散歩中に行わせるという飼主は未だに多く見かけますが、そもそも排泄は自宅内に定めたトイレで行うようにしつけなければならないということを再認識させて頂けます。


5.犬猫の飼主募集・飼い方教室及び譲渡

センターでの飼主募集は単なる動物の斡旋ではなく、要件と遵守事項を定めたうえで譲渡を行っています。以下順次説明します。

(1)飼主の募集について(公式サイト)
募集方法は「広報なごや」「ホームページ」「保健所」「センター窓口」等で行い、譲渡申込書を受け付けています。21年度の申請件数は、成犬は微増、猫は微減、子犬は減少しています。子犬はペットショップの生体販売の主役であることが微妙に影響しているのかもしれませんが、安易に購入するよりも、譲渡可能と判定された子犬をセンターから譲渡して頂くことを優先してご検討頂きたいとペットライフケアでは考えています。

(2)飼主の要件

この項目に関しては、事業概要の記載通りの内容を転記します。

・名古屋市内在住であること。ただし市内では適切な飼主の応募が
 なかった動物についてはこの限りではない。
・成人であること。
・動物の飼養が可能な住宅に住んでいること。
・万が一、何らかの事情で譲渡動物を飼えなくなったときは、代わりに
 世話をする人を決めること。
・子犬の譲渡を希望する場合は、センターで開催する子犬の飼主募集会
 に参加すること。

(飼主の遵守事項)
・法令等を遵守し、動物の健康及び安全を保持し、人への危害迷惑防止に
 努め、責任を持って終生にわたり家族の一員として大切に飼養すること。
・繁殖を防止すること。なお、犬及び猫については、避妊または去勢
 手術を実施すること。
・犬については、狂犬病予防法第4条第1項に定める登録をし、狂犬病
 予防注射を受けさせること。なお、登録及び狂犬病予防注射は、原則
 としてセンターで実施するものとするが、犬の所在地が市外の場合は
 この限りではない。
・名札及びマイクロチップの装着等自己の所有であることを明らかにする
 ための措置をすること
・譲渡後の飼養実態調査に協力すること
・子犬の譲渡を受けた飼主は、次の各号に掲げる事項を遵守しなければ
 ならない。
  ・散歩では排泄させず、自宅の一定の場所(トイレ)で排泄させる
   しつけをすること。
  ・センターで開催する犬のしつけ方教室またはパピー教室に参加
   すること。
・成犬の譲渡を受けた飼主は、センターで開催する犬のしつけ方教室に
 参加しなければならない。
・猫の譲渡を受けた飼主は、室内で飼養しなければならない。

●譲渡動物に対するマイクロチップ装着の義務化(公式サイトリーフレット

マイクロチップによる所有明示を普及させることを目的に、譲渡を受ける方には21年度から3,400円/頭を支払って頂き、センターで譲渡動物にマイクロチップを装着することを義務付けています。

犬のような登録制度がない猫の場合、首輪や鑑札が生態に馴染みにくいことを考慮すると、マイクロチップが最適な所有証明方法であるという考えのもと、普及に取り組んでいます。センターにはマイクロチップの所有証明を読み取るリーダーが設置されており、名古屋市全域から収容された動物は全頭チェックすることが可能です。

人慣れした様子からみて飼猫だと思われるような猫でも、所有証明がなければ殺処分されてしまっていた可能性を否定できません。飼主が懸命に探していても、タイムリミットまでに見つけられなければ悲劇を生んでしまいますので、猫の飼主の方はぜひマイクロチップの装着をご検討頂きたいところです。

21年度は犬221頭、猫142頭、計363頭にマイクロチップを装着して譲渡しました。名古屋市各区での装着数の内訳は上図の通りです。

なお、犬に関しては、最近ではペットショップ等で販売された時にマイクロチップを入れられることが増えたこともあって、若い収容犬の中には時々マイクロチップが入っている子もいるとのことでした。犬を飼う方は、首輪、鑑札と並んで、マイクロチップも装着義務があるものと考えて頂ければ幸いです。

(3)子犬の飼主募集会の開催及び飼い方教室・譲渡について
 (公式サイト、リーフレット)

子犬の譲渡を希望する方は「飼主募集会」に参加することが必須であり、くじで譲渡順を決定、後日譲渡に適した子犬の頭数分だけ譲渡希望者(子犬譲渡申請書)に通知され、来館して頂いて譲渡を行っています。また、譲渡時に、適正飼養等の飼主としての心構えや飼主の条件等を十分に説明し、散歩中に排泄をさせないしつけ、飼い方教室、登録、狂犬病予防注射を実施しています。直近3年の譲渡頭数は73頭、64頭、49頭と減少していますが、収容頭数や譲渡適性との関係もあり、努力不足と言い切ることはできません。

(4)成犬の譲渡について公式サイトリーフレット

譲渡対象になる成犬は、収容期間が満了した捕獲犬や引取犬の中から、健康状態と飼犬としての適性を2回にわたって審査して選別され、一定期間飼養して性格やくせ等を把握しているとのことです。譲渡希望者には、譲渡申込書に飼養場所、自宅の見取り図、家族構成、犬の飼養経験等を記入して頂き、必要に応じて家庭訪問や面接を行って、飼育環境を調査しています。
譲渡可能と判断された犬は、年齢・性格・くせ・大きさを考慮して、その犬にあった飼養環境の譲渡希望者に紹介(成犬譲渡申請書)し、相性が合えば譲渡しています。なお、1~2週間の飼養トライアルも行っています。譲渡時には犬の飼い方教室への参加、登録、狂犬病予防注射を実施しています。譲渡される成犬は146頭、167頭、187頭と年々増加しています。

このような業務の結果、譲渡された犬がどれくらいになるのかについて確認しておきましょう。犬の譲渡頭数と救命率をご覧ください。

譲渡頭数の増減は捕獲犬・引取犬の増減にも影響されるので努力が見えにくいところですが、注目すべきは救命率です。救命率は5年連続向上し、21年度は70%を超えました。平成14年度に導入された失踪保護動物情報管理システムが効果を発揮していることはもちろん、動物愛護センターの職員の皆様のご尽力の賜物だと考えております。譲渡適性のある犬の全頭譲渡を目指して動物愛護センターの更なるご尽力を期待するとともに、犬を飼いたいとお考えの方には、まず最初に動物愛護センターからの譲渡を検討して頂きたいと考えます。

(5)猫の譲渡について公式サイトリーフレット

猫は常時数十頭の子猫を飼養・展示し、希望者(猫譲渡申請書)に譲渡する方法をとっています。譲渡時には「猫の飼い方教室」を実施して室内飼養啓発用ビデオを観て頂いて、室内飼養を重点的に指導するとともに、去勢・避妊手術、しつけ方、健康管理について指導しているとのことです。

ここで猫の譲渡頭数と救命率について見てみましょう。

猫の場合は最も高い21年度の救命率でさえわずか3.2%に過ぎません。収容頭数は非常に多い猫ですが、病気にかかっている猫も多いことを考慮しても、あまりにも低い救命率であることを強く認識しなければなりません。犬以上に動物愛護センターのご尽力を期待するとともに、猫を飼いたいとお考えの方には、なによりもまず最初にセンターからの譲渡を検討して頂きたいと考えます。

【インタビューの目次】

   (1) 事業概要と事業別実績数(参加人数)
   (2) 愛護指導業務 (1) 動物愛護普及啓発活動、動物介在活動
   (3) 愛護指導業務 (2) 適正飼養啓発活動、教室、飼主募集等
   (4) 愛護指導業務 (3) 飼養管理、動物取扱責任者研修等
   (5) 管理指導業務
   (6) 問題解決のためにできること

【特別企画】
名古屋市動物愛護センターインタビュー

(3) 適正飼養啓発活動、教室、飼主募集等

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