愛護指導業務には大別すると12の業務があります。ここではペットライフケアが注目した業務を主に紹介していきます。

1.愛護館における普及啓発活動

動物の適正飼養及び動物愛護の普及・啓発活動の中心地がこの愛護館です。愛護館での活動は愛護指導業務の中心的な役割を果たしています。ここでは、動物の適正飼養及び動物愛護の普及・啓発、飼主募集・譲渡、動物介在活動などが行われています。

はじめに、愛護館の内部を紹介します。1Fの「展示室」では、犬猫の生理・生態・習性などがわかりやすく紹介されており、「資料室」では犬猫に関する絵本や専門書などの幅広い蔵書を自由に閲覧することができます。視聴覚装置も完備された2Fの「ワンワン教室」では、しつけ方教室や飼主募集会が行われています。館の手前には実際に犬とふれあえる「ふれあい広場」「ミニふれあい広場」があり、10頭前後の犬が開放され、来場者とのふれあいを深める機会を設けています。芝生広場では、動物介在活動等の各種イベントが行われています。

【愛護館全景】


【展示室】(1F)


【資料室】(1F)


【ワンワン教室】(2F)


【ふれあい広場】(愛護館前)


【ミニふれあい広場】(管理棟下)


【子犬・子猫展示舎】(1F)


【中型以上の成犬展示舎】(1F)


【芝生広場】


では順次愛護指導業務の内容を見ていきましょう。

2.動物愛護を啓発する各種教室等の開催

まずは所内開催されている「なかよしワンワン教室」「動物愛護教室」「動物体験教室」について見てみましょう。


「なかよしワンワン教室」は主に保育園児から小学生を対象にした教室で、動物とのふれあいを通して動物を愛することと、やさしい心を育む目的で開催されています。19年度以降は参加人数が減少傾向にあります。


「動物愛護教室」は対象が小学生から大学生に広がり、管理棟における殺処分の現状についても学ぶ機会を設け、次世代における理想的な動物との共生が叶うことを目指しています。動物の終生飼養や繁殖制限等、動物愛護と適正飼養の大切さを伝える大切な活動です。21年度は中学生の参加が増加に転じ、感受性が豊かな年頃から動物愛護と適正飼養に関する考え方を正しく理解して頂くことが期待されます。


「動物体験教室」は犬猫の飼養管理を体験できる教室です。犬猫とのふれあいをはじめ、実際の飼養で経験する給餌、清掃、ブラッシング、シャンプー、爪切り、犬の散歩など、犬猫の生理・生態と動物愛護、適正飼養について学びます。21年度は大学生の参加がなかったものの、中学生、専門学校生の参加が増え、291名の参加となりました。


センターの現状をスライドを活用して小中学生にわかりやすく説明する「夏休み愛護館ツアー」は19年度から開催され、トータルの参加人数は減少していますが、1回当たりの参加人数は徐々に増加しており、他の催事との兼ね合いで開催回数が減少していることの影響とも考えられます。動物愛護及び終生飼養を啓発すると同時に、命の尊さを伝えるために犬猫のふれあいも行われています。


実際に犬・猫・ウサギ・ハムスター・鳥を展示して飼う前に考えなければならないことを解説する「夏休み動物の飼い方教室」(協賛(社)日本愛玩動物協会)が昨年度より行われ、適正飼養に関する考え方の普及に努めています。


上記以外の活動として、生活衛生センターと共催して犬猫と昆虫について学ぶ「ワンニャンスクール」、小学生を対象に犬猫の生理・生態・習性等をスライドを使って説明した後、実際に犬猫を観察させたり、触れさせることにより正しい理解を深めた「もっと知って楽しく遊ぼう!-犬猫のひみつ-」、市民を対象に、動物愛護や適正飼養に興味を持って頂き、動物愛護について考えることと、センターにおける犬猫の飼養状況、飼養実績、様子等を映像で見て頂く機会を提供する「動物愛護を考えてみませんか」が行われています。


次に、所外活動を見てみましょう。所外活動では「移動ふれあい教室」と「動物愛護教室」が行われています。


「移動ふれあい教室(公式サイト申込書)」は幼保育園や小中学校を訪問し、所内での教室と同様、ふれあい事業を行います。20年度の参加人数は19年度の半分程度まで落ち込みましたが、21年度には再び増加に転じています。

「動物愛護教室」は移動ふれあい教室に併せて、犬猫の習性や殺処分されている動物の現状をスライドを使ってわかりやすく説明し、動物愛護と適正飼養を啓発しています。21年度は小学校3校(153人)と中学校1校(30人)で行われました。


各種教室を通じて動物の適正飼養と動物愛護を普及させるべく、活動している様子が伺えます。愛護館の来場者数が増えている半面、主催・共催している事業活動への参加人数が減少しているのは少し気掛かりではあります。感受性豊かな子供や中高生が、動物の適正飼養と動物愛護について体験しながら学ぶことは、動物との共生に関する望ましい価値観を創造するためには重要なことですので、参加人数が増加に転じることを期待しています。

3.動物介在活動

動物介在活動とは、高齢者などを対象として、やすらぎやコミュニケーションの活発化等を期待して行われる動物とのふれあい活動です。取材日にも行われていましたが、皆様の笑顔や歓声に接して、確かに何らかの効果は期待できるのではないかと感じました。

「ワンニャンなごやか教室(公式サイト)」の所内開催(申込書)・所外開催(申込書)の推移です。老人ホーム、デイサービス、児童福祉施設等の利用者を対象として行われています。開催回数はやや頭打ち感がありますが、参加人数は若干増加しており、高齢化社会の進行とともにアニマルセラピーのニーズは高まると考えられ、意義のある活動として推進されてゆくものとと推察しています。


2009年10月22日に行われた「高齢者とワンニャンふれあい広場」の模様です。近隣のデイサービス通所施設等のお年寄りを招待して行われました。動物とふれあう前にはドッグダンスが披露され、皆さんも楽しく見ていらっしゃいました。実際にふれあった時には、腕に抱きあげ、愛おしそうに見つめながら背中や頭を撫でている方が多くいらっしゃいました。

中型以上の成犬用が4室あり、新たな飼主様を待つ子たちが展示されています。ここにいる子は飼養適性があると判定された子なので、中型以上の成犬を探している方はこちらで様子を見てください。お邪魔した時には空室でした。なお、特定の大型犬種は別ルートで譲渡されることもあるので、センターにお問い合わせください。

子犬・小型成犬用9、子猫用1の収容室。来館者はここで動物たちの様子を見ることができます。犬猫の区分比率が建設当時の想定を物語っています。猫の収容場所には苦慮されており、展示室内に猫用ケージを準備する等、できる範囲で懸命に対処されていますので、猫を見たい方は展示室や2Fもご覧ください。

芝生広場では「なかよしワンワン教室」や「高齢者とのワンニャンふれあい広場」などが行われます。この日は近隣のデイサービス通所施設等の方々を招待してドッグダンスが披露された後、犬猫とのふれあいが行われました。動物が人にもたらす力を感じると同時に、人は動物に何をしているのか反省させられます。

管理棟下には、小さなふれあい広場があります。この日は7頭の子犬たちが元気よく走りまわっていました。健康管理の一環として定期的に適度な運動をさせているとのことです。同じ位の体格の子でも遊び方は様々で、性格の違いを把握するためにはこうした場面を見ることは大切です。飼主になりたい方は必見でしょう。

1日2回、10:00-11:30と13:30-15:00に10頭前後の犬を開放して、来館者とのふれあいの場を設けています。この日は5頭の成犬が来館者とふれあっていました。人懐っこい子は寄ってくることもありますが、中には寂しい瞳をしてあまり近寄ってこない子もいて、この子がセンターにいる事情や背景を改めて考えさせられました。

120インチスクリーンやプロジェクター設備がある部屋です。なかよしワンワン教室、犬のしつけ方教室、子犬の飼主募集会等はここで行われます。「動物の適正飼養」を広く普及させるための情報発信を行う中心地です。お邪魔した時には11/ 7(土)の「猫と遊ぼう!(楽しい室内飼育をめざして)」の会場設営が行われていました。

子供向けの絵本をはじめ、ペット関連雑誌、専門書等が収められています。犬猫について勉強したり、一息入れながら本に目を通すこともできます。壁面にはセンターから譲渡された猫たちの幸せな模様を写した写真や、動物愛護を啓発する掲示物なども飾られています。

犬猫の生理・生態・習性などを子供にもわかりやすく紹介しています。初めて見聞きすることもあり、改めて不勉強な自分を恥じました。最近のアニメやCGに馴染んでいる子供にとっては表現がやや魅力に乏しいことと、故障したコーナーがあるのは残念です。市には常設コンテンツの充実にぜひ予算を付けて頂きたいです。

周囲を緑に囲まれた愛護館。昭和60年開設。建物は「犬の収容・譲渡」を基本とした設計であり、いま求められる事業活動(猫の収容・譲渡、動物介在活動等)をスムーズに行うためには不便なのではないかとの印象を持ちました。限られたスペースを有効活用されている職員の皆様の努力の跡が垣間見えます。

【インタビューの目次】

   (1) 事業概要と事業別実績数(参加人数)
   (2) 愛護指導業務 (1) 動物愛護普及啓発活動、動物介在活動
   (3) 愛護指導業務 (2) 適正飼養啓発活動、教室、飼主募集等
   (4) 愛護指導業務 (3) 飼養管理、動物取扱責任者研修等
   (5) 管理指導業務
   (6) 問題解決のためにできること

【特別企画】
名古屋市動物愛護センターインタビュー

(2) 動物愛護普及啓発活動、動物介在活動

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